飲食店経営者が知っておきたい税務・会計のポイント12選

飲食店経営者が知っておきたい税務・会計のポイント12選
2026年7月28日
飲食店は、現金、クレジットカード、QRコード決済、予約サイト、デリバリーサービスなど、売上の入口が多い業種です。
食材の 仕入れや廃棄、従業員へのまかない、厨房設備、店内飲食とテイクアウトの税率区分など、飲食店特有の処理も少なくありません。
日々の営業は順調でも、売上の計上漏れや棚卸しの誤りによって、決算時に利益が大きく変わることがあります。税務調査では、現金売上、レジ記録、予約情報、仕入れと売上の対応関係などを確認される可能性があります。
この記事では、個人経営の飲食店から法人店舗まで共通して確認したい、税務・会計のポイントを12項目に分けて解説します。
1. 現金売上はレジ記録と手元現金を毎日合わせる
飲食店では、現金売上の管理が最も重要な業務の一つです。
閉店時にレジの売上データを締め、レジ内の現金を数えます。釣銭として用意した金額を除いた残高と、当日の現金売上が一致するか確認 しましょう。
差額が出た場合は、原因が分からなくても記録を残します。差額を翌日の売上へ加えたり、帳簿を無理に合わせたりすると、後から確認できなくなります。
現金をそのまま仕入れや私的な支払いに使うと、売上と経費の両方が帳簿から漏れる原因になります。売上金は定期的に事業用口座へ入金し、店舗のお金と個人のお金を分けることが大切です。
2. キャッシュレス売上は入金額ではなく総額で計上する

クレジットカードやQRコード決済では、決済手数料を差し引いた金額が入金されることがあります。
例えば、お客様の支払額が10万円、決済手数料が3,000円、口座への入金額が9万7,000円だった場合、売上は10万円です。差額の3,000円は支払手数料として処理します。
売上高:100,000円
支払手数料:3,000円
普通預金への入金:97,000円
入金額だけを売上にすると、売上と経費がそれぞれ過少になります。決済会社の管理画面から、売上総額、手数料、返金、入金額が分かる明細を保存しましょう。
3. 売上は原則として入金日ではなく提供日に計上する
飲食店の売上は、原則として料理 やサービスを提供した日に計上します。
カード会社から入金された日や、デリバリー会社から振り込まれた日を売上日にするわけではありません。月末の売上が翌月に入金される場合は、決算時に売掛金を計上します。
予約時に受け取った前金やキャンセル料、商品券・食事券の販売などは、通常の飲食売上と計上時期が異なる場合があります。POSレジ、予約システム、決済明細の締め日を整理しておくと決算がスムーズです。
4. デリバリー売上も手数料控除前の金額を確認する
デリバリーサービスでは、販売手数料、配達関連費用、広告費、返金などが差し引かれて入金されます。
会計上は、原則としてお客様への販売額を売上に計上し、サービス会社へ支払った手数料等を経費として分けます。
デリバリーの売上を銀行への入金額だけで計上すると、実際の売上高や手数料率が分からなくなります。店舗売上とデリバリー売上を部門や補助科目で分けると、それぞれの採算を確認しやすくなります。
5. 食材・飲料は期末に棚卸しが必要
決算日や年末に残っている食材、飲料、未開封の商品などは、原則として棚卸資産に計上します。
仕入れた金額をすべて当期の経費にするのではなく、期末に残っている分を仕入高から除くことで、その期間に使用・販売した原価を計算します。
棚卸表には、品名、数量、単価、金額を記載します。冷蔵庫、冷凍庫、倉庫、店内の酒類など、保管場所ごとに確認すると漏れを防げます。
毎月または定期的に棚卸しを行えば、原価率の変化や過剰在庫、紛失、廃棄の増加にも気づきやすくなります。
6. 廃棄ロス・試食は記録を残す
賞味期限切れ、調理ミス、売れ残りなどで食材や料理を廃棄することがあります。
通常の営業で生じた合理的な廃棄であれば、その仕入れは売上原価に含まれます。ただし、大量の廃棄や高額な食材の廃棄があった場合、記録がなければ在庫差異や私的消費との区別がつきません。
廃棄日、品目、数量、理由を記録し、必要に応じて写真や責任者の確認を残しましょう。新メニュー開発のための試作や試食も、目的・実施日・参加者などを記録しておくと説明しやすくなります。
7. まかないは給与課税に注意する
従業員へ無料または低額で食事を提供する場合、一定の要件を満たさなければ、食事による経済的利益が給与として課税される可能性があります。
2026年4月1日以後に支給する食事については、次の二つを満たす場合、原則として給与課税しない取扱いです。
従業員等が食事の価額の50%以上を負担している
会社負担額が、消費税等を除いて月額7,500円以下である
現金で食事代を支給する場合は、原則として給与として扱います。深夜勤務に伴う夜食については別の取扱いがあります。
飲食店のまかないは、自店の食材を使うため金額が曖昧になりやすい項目です。対象者、提供日数、食 事の価額、本人負担額を決め、給与台帳やまかない表で管理しましょう。
8. 店内飲食10%とテイクアウト8%を区分する

消費税では、店内飲食は標準税率10%、酒類を除く飲食料品のテイクアウトは軽減税率8%です。
同じメニューでも、お客様が店内で食べるか持ち帰るかによって税率が変わります。原則として、販売時点におけるお客様の意思確認によって判定します。
レジに店内・持ち帰りの税率区分を設定し、レシートにも税率ごとの金額を表示できる状態にしておきましょう。
酒類の販売は持ち帰りでも10%です。また、ケータリングや配膳など役務提供を伴う取引は、単なる飲食料品の販売とは異なる場合があります。
9. インボイスと仕入税額控除を確認する
消費税の課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、原則として帳簿と適格請求書等の保存が必要です。
食材の仕入れだけでなく、家賃、設備、消耗品、広告、修繕、外注などについても、請求書や領収書の記載内容を確認します。
小売店やスーパーなどから購入する場合は、適格簡易請求書となるレシートが多いため、日付、取引内容、税率ごとの金額、登録番号等が確認できる状態で保存しましょう。
飲食店は売上に8%と10%が混在し、仕入れにも複数税率が含まれます。会計ソフトの税区分を誤ると消費税額に影響するため、入力ルールを統一することが重要です。
10. 厨房設備・内装工事は内容ごとに分ける
冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機、オーブン、エアコン、POSレジなどは、購入時に全額を経費にできず、減価償却が必要になる場合があります。
内装工事も「内装工事一式」で処理するのではなく、建物附属設備、器具備品、修繕費など、工事内容ごとに区分します。見積書や請求書に内訳がない場合は、施工会社へ明細を依頼しましょう。
少額資産の取扱いは、個人・法人、青色申告の有無、取得価額、取得時期などで異なります。補助金を利用して設備を購入した場合も、取得価額や圧縮記帳の検討が必要になることがあります。
11. 交際費と自分の飲食代を区別する
取引先との打合せ、従業員との会議、他店の視察などで飲食代が発生することがあります。
領収書だけでは事業との関係が分からないため、相手先、参加人数、目的を記録します。「市場調査」「メニュー研究」と記載するだけで、すべての外食費が経費になるわけではありません。
経営者本人や家族だけの通常の食事は、原則として生活費です。新メニューの参考など事業上の必要性がある場合は、訪問目的、確認した料理、業務への活用内容を具体的に残しましょう。
12. 原価率・人件費率・FL比率を毎月確認する
税務申告のためだけに帳簿を作るのではなく、毎月の経営判断に活用することが大切です。
飲食店では、売上高に対する食材原価と人件費の割合を示すFL比率が重要な指標です。
FL比率=(食材原価+人件費)÷売上高×100
売上が増えていても、食材価格の上昇、廃棄の増加、シフトの過不足によって利益が減ることがあります。店内、テイクアウト、デリバリーなど販売方法別の売上と利益も確認しましょう。
月次で数字を確認すれば、価格改定、メニュー変更、仕入先の見直し、人員配置の調整を早めに行えます。
飲食店が税務調査に備えて保存したい資料
税務調査への対応は、特別な資料を後から作ることではなく、日々の記録を継続することが基本です。
日次のレジ締め資料・ジャーナル
現金過不足の記録
カード・QR決済・デリバリーの明細
予約台帳・注文履歴
仕入請求書・領収書
期末棚卸表
廃棄記録・まかない表
銀行口座・事業用カードの明細
厨房設備・内装工事の契約書と明細
レジ、予約、決済、銀行入金の数字を相互に確認できる状態が理想です。
まとめ
飲食店の税務・会計では、売上の入口が多いこと、食材在庫があること、8%と10%の税率が混在することが大きな特徴です。
特に重要なのは、現金売上を毎日記録すること、キャッシュレス・デリバリー売上を手数料控除前の総額で計上すること、期末棚卸しを行うことです。
また、まかない、厨房設備、交際費などは、ルールを決めずに処理すると決算時の確認に時間がかかります。日々の管理方法を整え、毎月の原価率や人件費率まで確認できる体制を作りましょう。
税理士法人Two onesでは、飲食店の記帳、月次決算、消費税、インボイス対応、法人化などのご相談に対応しています。

