親の預金を亡くなる前に引き出しても大丈夫?相続税申告の注意点を税理士が解説

親の預金を亡くなる前に引き出しても大丈夫?相続税申告の注意点を税理士が解説
2026年8月3日
親の入院費や介護費、葬儀費用などに備えて、亡くなる前に預金を引き出すことがあります。しかし、口座から引き出しただけで相続財産から外れるわけではありません。この記事では、使途ごとの相続税上の取扱いと、残しておきたい記録を解説します。
親の預金を亡くなる前に引き出しても問題ない?
親本人の意思に基づき、親の生活費、医療費、介護費などを支払うために預金を引き出すこと自体が、直ちに相続税上の問題になるわけではありません。
ただし、重要なのは「誰の意思で引き出したのか」「誰のために使ったのか」「死亡日時点でいくら残っていたのか」です。親に無断で引き出した場合や、子が自分のために使った場合は、相続人間のトラブルや贈与税など別の問題が生じる可能性があります。
引き出しただけでは相続財産から外れない
相続税は、原則として亡くなった日時点で被相続人が所有していた財産を基に計算します。
例えば、親の口座から亡くなる直前に300万円を引き出し、死亡日時点で使わずに自宅の金庫などに保管していた場合、預金残高には現れなくても、その300万円は原則として「手元現金」として相続財産に含めます。
口座残高だけを確認して申告すると、引き出した現金が財産から漏れてしまうため注意が必要です。

親の医療費・介護費・生活費に使用した場合
引き出したお金を、親本人の入院費、介護施設費、生活費などに実際に使用した場合、その支出によって親の財産は減少しています。死亡日時点で残っていない金額まで、手元現金として申告するものではありません。
ただし、税務署やほかの相続人から使途を確認されたときに説明できるよう、領収書、請求書、振込記録、現金出納のメモなどを保存しておくことが重要です。複数回に分けて多額の現金を引き出している場合は、日付・金額・使途を一覧にしておくと整理しやすくなります。
葬儀費用に備 えて引き出した場合
葬儀費用に備えて死亡前に現金を用意していても、死亡日時点で未使用なら、まずは相続財産として手元現金に計上します。
その後、相続人が負担した通夜・告別式、火葬、埋葬など一定の葬式費用は、相続税の計算上、遺産総額から控除できる場合があります。ただし、香典返し、墓石や墓地の購入費、法要の費用などは、原則として葬式費用の控除対象になりません。
「葬儀に使う予定だったから相続財産に入れない」のではなく、死亡日時点の現金を財産に計上したうえで、実際に支払った控除対象の葬式費用を別に整理します。
子が自分のために使用した場合
親の預金を引き出し、子自身の買物、借入返済、生活費などに使用した場合は注意が必要です。親の意思による贈与であれば贈与税の対象となる可能性があり、相続開始前の一定期間内の贈与は相続税の計算に加算される場合もあります。
親の承諾がなければ、贈与とはいえず、親に返還すべき金銭として扱われたり、遺産分割の際に問題になったりする可能性があります。税務だけでなく民事上の判断も関係するため、自己判断で処理しないことが大切です。
税務署は死亡前の預金履歴も確認する
相続税の確認では、死亡日の預金残高だけでなく、死亡前の入出金履歴も確認されることがあります。特に、多額の現金引出し、家族口座への送金、使途が分からない継続的な 引出しは、手元現金、名義預金、生前贈与などがなかったか確認されるポイントです。
国税庁の相続税調査資料でも、現金・預貯金等は申告漏れが生じやすい財産として継続的に確認されています。「口座から出したから分からない」と考えるのではなく、入出金の理由を資料で説明できる状態にしておきましょう。
相続人同士のトラブルを防ぐための記録
親の預金を管理する場合は、通帳やキャッシュカードを預かった経緯、親本人の意思、引出日、金額、使途、支払先、残額を記録します。可能であれば、ほかの相続人にも管理状況を共有しておくと安心です。
親の判断能力が低下しており、本人の意思確認が難しい場合には、安易に家族が預金を動かし続けるのではなく、金融機関の代理人制度や成年後見制度なども含めて専門家へ相談することをおすすめします。

死亡後に預金を引き出す場合はさらに慎重に
金融機関が死亡の事実を把握すると、通常は預金口座が凍結されます。死亡後、凍結前にキャッシュカードで引き出した場合でも、そのお金が相続財産であることは変わりません。
葬儀費用 などに使用する事情があっても、無断で引き出すとほかの相続人との争いにつながることがあります。相続人間で了承を得て、金額と使途を明確に記録することが大切です。金融機関の相続預金払戻し制度を利用できる場合もあります。
まとめ
親の預金を亡くなる前に引き出した場合、引き出したという事実だけで相続財産から外れるわけではありません。死亡日時点で残っていた現金は相続財産に計上し、親のために使用した金額は領収書などで使途を説明できるようにします。
税理士法人Two onesでは、死亡前後の預金引出しを含む相続財産の確認や相続税申告についてご相談を承っております。預金履歴の整理方法や申告すべき金額が分からない場合は、お気軽にご相談ください。立川市・国立市を中心に対応しております。

